敷地の「余白」を上手に使う
ここでは、敷地のさまざまな条件に対して、どのように家を配置したらよいかを考えてみましょう。
敷地に建物を配置すると余白が生まれます。これらは「なんとなく残ってしまった」から余白になるわけではありません。この余白には、アプローチや駐車スペース、庭やサービスエリアなどをつくっていくため、必要なかたちや大きさを想像しながら、同時に家の輪郭も考えることが大切です。
アプローチや庭のほかに、余白を使ってサービスエリアを設けたり、「溜め」をつくって道路から奥行きをもたせたりした例です。余白を上手に使う事もポイントとなります。
道路の方角で配置が決まる
敷地のどの方角に道路が接しているかによって、家と庭の配置が決まってきます。一般的に日当たりのよい南側に庭を持ってきて、家は北側に寄せます。また、家を東西に長くすることで、南側の庭に対して、できるだけ広い面積で家が接するようなかたちにします。
角方角に道路がある場合の家の配置の違いを示した例です。具体的に3つの例をあげましたが、ポイントは次の3点です。
①道路から家までの人のアプローチ
②駐車スペースへの車のアプローチ
③車から降りた後の家までのアプローチ
いずれも余白の残し方がカギとなります。
日照条件のよいかたちにする
太陽の光を家の中に最大限取り入れるためには、敷地の日照条件をきめ細かく読み取らなければなりません。ほとんどの場合が、隣に建物があるでしょうから、敷地にどのような影が落ちるのかを、時間ごとに把握しておきたいところです。仮に隣に建物がなかったとしても、将来的に建つ可能性もふまえて、それらの影響を最小限に抑える配置を考えたいものです。
南側に隣家がある場合に、その影の影響を回避するための工夫例です。太陽の動きに合わせて家のかたちを導き出しています。太陽の光を取り入れるには大きい窓の設置や建具の工夫などの方法がありますが、まずは家の配置とかたちが肝心です。
家づくりの基本125参照
敷地図からつかみたいこと
敷地を取り巻くさまざまな条件は、想像以上に住まいの設計に影響を及ぼします。日照や通風、道路の状況、隣地との関係、法的な要件、敷地の変形や高低など、その項目は多数あります。住宅の面積やかたちがこれらの条件で決まってしまうこともあります。しかし、土地のもつ性質をしっかりと把握していれば、これらを最大限生かした間取りができるはずです。
そこで、まずは敷地図(★1)を見てみましょう。敷地図には、方位、道路の幅、面積を求めるための数値や表が示されています。ここで、境界辺の長さや面積、土地の変形の角度や接道の長さなどを大体把握しておくことが大切です。建て替える場合でも、打ち合わせは図面をベースに進めるので、敷地図を理解できるようにしておきましょう。
現地へ必ず行く
次に、第3章で紹介した建物の面積制限、高さ制限、防火規定の制限などの敷地にかかる法律も調べておきましょう。
現地へ行き、自分の目で土地の状態を確かめることも重要です。敷地図を照らし合わせながら現地を見ることで、図のイメージと実際の感覚を一致させることができます。
注意したいのは、敷地や道路の高低差が敷地図には表示されていない点です。前もって図面に書き込んでおくとよいでしょう。
敷地のチェックポイント
現地でチェックしたいポイント15項目を下にまとめました。
周辺の状況を把握することで、どこに玄関をつくるべきか、高さはどのくらいにすべきか、通風や採光はどのような配置にすれば確保できるかが、ざっくりと見えてくるはずです。
たとえば、図の⑤の接する道路と敷地の幅については、建物の大きさに影響を与えるだけでなく、車の出し入れにも関係してきます。⑧の隣の窓の位置にも注意します。自分の敷地にばかり目がいきがちですが、周囲の建物により間取りを変えざるをえないこともありますので、敷地まわりの建物もよく確認します。⑫の眺望のよいh条項も間取りを検討する際の重要なポイントとなります。
このような細かい点も考えながら、図を参考に丹念に見ていきましょう。
★1 敷地図
敷地丈量図のこと。道路境界線や隣地境界線の長さなどが入り、敷地の方位、形状や面積がわかる図。通常は、土地所有者やハウスメーカーなどからもらえる。
①正確な方位
敷地ラインと一致していることは稀。日照計画にえいきょうするので、敷地が何度くらい振れているかを確認する。
②敷地の高さ
敷地との高低差は人や車んぽアプローチに影響する。スロープや階段の長さも決まる。また、隣地との高低差は隣家に与える(受ける)影の検討に必要。
③接する道路と歩道の幅
道路斜線による建物の高さ制限に影響する。車の出し入れの位置や所要スペースの検討にも必要。
④道路と接する長さ
旗竿地(はたざおち)や狭小地などで、人と車両方のアプローチの検討に必要。
⑤接する道路の交通量
2つの道路に接する場合など、車の出し入れ位置の検討に必要。プライバシーに影響する場合もある。
⑥塀の高さと材質
プライバシー、日照、通風、眺望に影響。生垣なのか、ブロック塀なのか、フェンスかなども確認。
⑦境界から隣家までの距離
プライバシー、日照、通風、眺望に影響を受ける(与える)。とくに隣家が迫っている場合は要チェック。
⑧隣地建物の窓の位置
互いのプライバシーに影響。その窓が何の部屋にあたるのかも確認。リビング前にトイレがきたり、寝室どうしが鉢合わせしないように。
⑨水道・ガス・下水管の取り出し位置
建物配置、水まわりの位置の検討が必要。
⑩側溝(そっこう)の位置と幅
ポーチやカーポートの排水、雨水排水の方法の検討に必要。溝ふたのつくりなどもわかるとよい。
⑪電柱・電線・支線の位置
人や車の出入り位置に影響。電柱や支線とアプローチがぶつからないようにする。
⑫眺望のよい方向
公園や隣地の庭など眺望のよい方向があれば、部屋のゾーニングや窓位置を工夫し、借景として生かしたい。
⑬周辺建物の外観・町並み
新しい建物は既存の景観を壊さないデザインで、できれば町並みに寄与したい。周囲の様子を少し先までチェック。
⑭街路樹の位置・樹種・高さ
車の出入り位置の検討に影響。借景として取り入れる可能性も考えられる。
⑮敷地内の樹木の位置・高さ
建物配置や形状に大きく影響。枝張りもチェックする。樹木を残すと建設時の作業に影響する場合もある。
家づくりの基本125参照
坪あたりの建築費
建物の価格は構造や広さ、間取り、グレードなどによって大きく変わります。また、同じ仕様の建物でも、建てる場所や建てる時期などによって、価格は変わるものです。
坪単価とは、1坪(3.3㎡)あたりの建築費のことで、工事費を床面積で割った値です。「坪50万円」などと示し、仕様や性能の違いを価格で比べられるのがメリットですが、同じ仕様でも坪単価が異なる場合があります。
坪単価の注意点
①何が含まれているか
本体工事費の項目は統一されていません。エアコンや照明のグレード、床暖房、造付数などを含むのか含まないのかで坪単価は変わります。
②床面積が同じではない
坪単価を計算する際に用いる床面積の算出方法に定義はありません。たとえば、ロフトやベランダなどは、屋根や床や壁があっても法的には床面積には入れません。しかし、工事には他の部分同様に手間がかかります。法的にカウントされていない(建築確認申請などでは明記されない)施工床面積を坪単価の計算上に加えれば、数字は安く見えます。
③坪単価を左右するもの
施工者、本体工事費、仕様が同じでも、坪単価に差がつくことがあります。ポイントは次の3つです。
床面積の大小 浴室やキッチンの数やグレードは小さい家だから安くなるわけではありません。床面積とは関係なく坪単価は、小さい家ほど高くなる傾向にあります。
階の面積配分 同じ床面積でも、1階と2階の面積配分により坪単価が異なります。1階が大きく2階が小さい建物は、1階と2階が同面積の建物と比べると、コストのかかる屋根や基礎の面積が大きくなり、1階が大きい家ほど高くなります。
建物の形 出っ張りなどがある場合、真四角の建物と比べると外壁や屋根の面積が増えて、坪単価が高くなります
本体価格から引き渡し価格は20%から30%増しになる事が通常です。
家づくりの基本125参照